INTERVIEW

Interviewer / 矢島大地

--音楽的な背景の話はよくわかったので具体的に楽曲の話も伺っていきたいんですが、歌のテーマ性で言ってもJasonAndrewはハードコアマナーや形式に囚われていないですよね。たとえば“Reach”や“Fake Smile”を聴くと、恋愛にまつわる別離を感じる歌になっていて。そういった傷心をストロングスタイルなハードコアに載せていくところが面白いなと思ったんですけど。

Ryosei「その2曲に関しては歌の内容をあんまり説明したくないんですけど……(笑)。でも本当に、曲がこうだから歌詞はこうでなくちゃいけない、みたいなのがないんですよ。ただ日記を綴っている感覚に近い。仮にメッセージがない歌だとしても、衝動的に出てきたものだったらそのまま歌えばいいって思うんですよ。曲の雰囲気と合ってなくても、でも自分から出てきたものならストレートに歌えばいいと思ってる。で、そうやって自分を素直に表して生きていけばいいんだっていうのもハードコアから受け取ってきた気持ちなので」

--そうですよね。それこそ先ほどの自治の話ですが、パンクやハードコアの根底にあるものとは何なのかを考えると、寛容性だと思うんです。普通という枠の外に選択肢を求める人、何かに弾かれた人、勝手に「弱い」とされてきた人達の人生を受け入れて、抱き締めるための音楽だと思うんですよね。そういった意味で、自分を素直に表明すればいいっていう気持ちはめちゃくちゃ腑に落ちます。それが“Drain”や“Don’t look back”、“Tomorrow”という曲からよくわかる。

Ryosei「その表現は俺もしっくり来ますね。まさに俺は、ハードコアの優しさに惹かれてきたので」

ムー「フロアで起こっていることは暴力的に見えるかもしれないけど、でもハードコアのライヴって、誰もが笑顔なんですよね。人混みで腕を振り回すとか、大声で思い切り歌うとか、そんなこと日常では絶対にしないじゃないですか。でもそれを、多くの人間が集う場所でできる。そうやって一人ひとりが受け入れ合っているところが素晴らしいと思うんですよ。今は特に、なんでもかんでも明確にしたがる世の中じゃないですか。インターネットを見れば考察の類がたくさん転がっていて、誰もが正解を先に見つけたがってる。でもハードコアのフロアにあるのは、暗黙の中でお互いを尊重し合うっていう気持ちなんですよね。大事なのは、何が正しいかっていうことじゃない。それぞれが自分に素直に生きることが一番大事で、それが人の数だけあるっていうのが美しいと思うんですよ。通じ合いながら、わざわざ言語化しない。それが優しさなんじゃないかなって。怒りも不満も、悲しみも、人それぞれに抱えてきた気持ちがそのまま肯定されるというか。そういう感覚は俺らにとっても大事なものですね」

--ハードコアのライヴって、楽しみに来てるのはもちろん、一人ひとりが自分と闘いに来ているところが美しいと思っていて。それぞれに抱えているものが違うからこそ、それぞれが自分と向き合って、前を向こうとしている。そういう生き様が音楽のもとにバラバラなまま集合している感じがあって、そこに人間が見えてくる。そういう根本的な部分を感じる話だなぁと思って聞いてました。

Ryosei「本当にそうなんですよね。僕はB.B.STREETでイベントを組む側の人間ですけど、どの企画を見ていても、それぞれが何かとファイトしている感じがあるんですよ。で、音楽の力があることで、そいつの信念がブレないきっかけになるんじゃないかなと思っていて。どうしてもひとりだけでは闘えないんだけど、ひとりで向き合うしかないこともたくさんある。そういう時に音楽が力になってくれる……そこに人間らしさがあると思うんですよね。俺も、そういう人間っぽいことをしたいんだと思う」

--どうして?

Ryosei「バンドマンだから。『アーティスティック』っていう言葉も、結局は人間らしいかどうかっていう部分にかかってくると思っていて。FACECARZを観てハードコアに食らったのも、人間らしいなって思ったからなんですよ。それぞれに成し遂げたいものがあって、それぞれの人生を生きていて。じゃあどうするのか?っていうのを一人ひとりが考えるためのきっかけが見つかったらいい。そのための力とかスイッチを入れるのがライヴなんだと思うし、それを求めて人はライヴに行くと思うんです。そういう意味での遊び場というか……上手く言えないんですけど。とにかく遊びたいだけだとは思うんですけどね。でも、生きるか死ぬかの遊びだからこそ見つかるものがあるんじゃないかなって思ってる」

--Ryoseiさんはどうして遊びたいんですか。

Ryosei「遊んでしか来なかった人生だから、ですかね。俺は勉強がめちゃくちゃ嫌いなんですよ。それで大学も中退してて、両親には悪いことをしたなって思ってるんですけど。中学生の頃から家庭教師がついてて、親はどうしてもいい学校に行かせたかったみたいなんです。でも当時から、勉強が本当に無理だったんですよね。それをわかりながらも、親に言われるがまま無理やり勉強して。なぜか理系の道に行って……それも家庭教師が理系だっただけで、全部がレールの上だったんですよ。ただ、俺は俺でどう生きて行きたいかがハッキリしてなかったから、そのレールに乗るしかなかった。そんな時にハードコアに出会っちゃったもんだから、レールになんか乗ってる場合じゃねえなって思うようになって。一応大学までは行けたけど、四力って言われる4つの力学があるんですけど、そのふたつ目でもう無理だったんですよ。あの頃はマジで元気がなかったし、それで大学も辞めて、バンドをやって生きていこうと思いました」

--先ほど話していただいた「オルタナティヴ」の意味に繋がる話をしてもらった気がするんですが、人って、選択肢がないと死んじゃうものだと思うんですよ。

Ryosei「本当にそうですよね」

--自分で決める以前に、これしか選択肢がありませんっていう状況が一番苦しい。そういう意味で言うと、目の前にある状況の外に選択肢を求める感覚を「遊び」と表現されているのかなと思ったんですけど。

Ryosei「そうっすね。バンドマン目線でのジャンルの話をしてますけど、でも聴き手にとっては、自分なりの解釈一発じゃないですか。音楽的にはワケのわからない曲だとしても、聴いた人からすればめちゃくちゃ元気が出る音楽かもしれない。その基準も解釈も受け取り方も、人それぞれなんですよ。で、人それぞれなんだとしたら、好きなものをたくさん表現して、その曲の中で俺ら自身が遊びまくれたらいい。そうやって、どこにでもいける選択肢を用意することが俺らにとっての『オルタナティヴ』だと思うんですよね。それぞれっていう意味として、俺らはオルタナティヴだと思ってる。……未だに、大学の時の思い出が悪夢のように蘇るんですよ。本当に嫌だったし、大学を辞めた時は、親父に一瞬だけ縁を切られてたし。勉強をやってもダメで、何かを選ぶこともできなくて。そんな時代の自分が夢に出てきて、ガバッ!って起きることが未だにある。人には、そんな思いをして欲しくないので。俺が人に直接できることはないけど、この音楽が何かの力になれるんじゃないかなっていうのは思ってるんですよね」

--“Tomorrow”で歌われていることですよね。明日じゃなくて今日を最高にするために、人に寄り添うことができる。

Ryosei「そういうことくらいはできるんじゃないかなって思ってますね。好きに聴いてもらえればいいと思うし、自分で決めて勝手にやれよっていう姿勢ではあるんですけど。でも自分で決めて走り出す時の、何かしらのきっかけにはなれると思ってる。自分の人生は自分で切り開くしかないし、好きに生きればいい。だからこそ、こういう音楽をやってるんだと思う」

--“Drain”で歌われている<ぶっ壊せ>(和訳)という言葉も、敵を殴れとか、気に食わないものをぶっ壊せとか、そういう意味ではないですよね。自分を縛るものを自分で振りほどいて、まず自分で自分を解き放ってやれっていうことじゃないですか。そうやって自分がハッピーになれれば、自然と人を思いやって生きていけるじゃないかっていうメッセージがここにあって。楽しさや遊び場を求めるのは、優しさを大事にしているからなんだろうなって思うんですよね。

Ryosei「間違いないです。本当にそうだと思いますね。たとえば過去のミクスチャーみたいに『前時代に倣わず自由に混ぜる、それこそが反抗だ』みたいな気持ちも全然なくて。怒りや不満を原動力にしている音楽ではないと思うんですよね。生きていれば不満も生まれるし、怒りもあるんですけど、それをぶつけ合うっていうのは俺らにとっての正論じゃない。抱えたネガティヴィティも自由に発散して、違う形にするのが俺らにとってのライヴなので。だからライヴが大事なんですよ。レイジな気持ちをガソリンにすることが多かったのがハードコアだと思うし、俺らもそこに惹きつけられてきた。だけど怒り続けるためにやってるわけじゃなくて、それを何とか変えたいから音楽をやってるんですよ。なので、俺らがやるんだったら、怒りを主成分にするのは違うなっていう気がする。そういう人間性ですしね(笑)。今回のアルバムで言っても、怒りじゃなくて、あるとすればSadくらいのものなんですよ。それもたまたまSadだっただけで、Sadが大事だっていう気持ちでもないんですよね。曲を道具にしてハッピーになってもらって、楽しんでもらえばいいし。中には、怒りを発散する人がいてもいいと思うし。だけど人は傷つけるなよっていう感じです。人それぞれであるっていうのが、何より大事なことなので」

--先ほども話に出ましたが、今作で特に印象的だった曲について伺います。まず“Close Your Eyes”について。ニュースクールハードコアと思いきや、途中で往年のヘビメタ的な3拍子のセクションに雪崩れ込み、綺麗なハーモニーがツーバスの上に乗り、モッシュパートで締め括られる。ここまで話してきてくれた音楽的な要素が全部盛りになっている曲なんですが、この曲はどういうところから出てきたんですか。

Ryosei「この曲を作るのが死ぬほど大変で(笑)」

--なんでそんなに大変な曲を作ったんですか(笑)。

Ryosei「まず最初に、ギターソロの部分だけがあって。そこはKAITOが作ってきたところで、そこが曲の冒頭になる予定だったんですよ。でも俺らっぽくなさ過ぎるというか、あまりにもコテコテのメタルだなぁってなっちゃって。JasonAndrewに落とし込めなかったんですよね。じゃあこのフレーズを曲の後半に持って行ったらいいんじゃないかっていうことで、ハードコアと混ぜてみた感じでしたね。KAITOもどうしてこんなにヘビメタなフレーズを持ってきたのかなって思うんですけど、単純に、メタルな時期だったんじゃないかっていう結論に至りました(笑)」

--そういう人なんだ?

Ryosei「聴いた音楽の要素をストレートに出しちゃう人なんで(笑)。そういうストレートさがちゃんと曲の個性になるから、面白いもんだなって思うんですけど。パーツが面白いなら、それをなんとか1曲に入れ込みたい。そういう気持ちがあるので、なんとか形にできてよかったですね」

--次に、“One Day”について。ジャジーなスキットが入ってくるところもカッコいいんですが、それ以外は直球のメロディックハードコアと言える曲です。この曲は?

Ryosei「あのスキットは、友達のDJ WU-TANGってヤツにやってもらったもので。彼はGAME CENTERやTrack’sと仲がよくて、そのバンド達がB.B.STREETによく出ていた頃に繋がったんですよ。で、WU-TANGから『スキットやりたい』って言われたんですけど、スキットだけで1曲やるのは難しいかもしれないと。でも曲の中に入れるのはアリだなと思って。たとえばハードコアでは曲の終わりにスキットが入ることがあるけど、それを『メロディック』と名前がついてる音楽性でやってるバンドはあんまりいないなと思って、それが面白いんじゃないかなって。スキット以外の曲自体は全部俺が作ったんですけど、今まで、逆にストレートなメロディックハードコアをやってこなかったなと思って(笑)。純然たるメロディックハードコアを作ってみようっていうのがきっかけでしたね。Strike Anywhereとか、COMEBACK KIDとか、あの感じ。それを直球で表してみました。リリックで言うと、バンドマンに対するメッセージというか。バンドマンとして生きている人に対して、寄り添うような気持ちが歌に出てきた気がします。バンドマンに対して言いたいこと、寄り添いたい気持ち。まあ………正直に言うと、俺は独裁者になりたいんですけど」

タカギ「ははははははは。いきなりどうした(笑)」

Ryosei「権力で人をコントロールするっていう意味ではなくて、全知全能のバンドマンになりたいっていう意味なんだけど(笑)。なぜかと言うと、俺はバンドマンに向いていると思うから。それをやるんだと決めたのなら、全知全能になりたい」

--どんなところがバンドマンに向いていると思います?

Ryosei「俺は人間が好きだから。嫌いな人がいないんです。この人はどんな生い立ちで、どんな人生を生きてきたのかってことにめちゃくちゃ興味があるんですよね。それこそ『人間らしいことがしたい』っていう部分に繋がるんですけど、人間はそれぞれ違う人生を歩んでいるから、それを素直に表現している姿が魅力的なんですよ。元は同じ赤ちゃんだったのに、違う過程を歩むことで、こんなにも違う存在になる。その過程こそが面白いし、興味があるし。逆に言えば、過程が違うだけであって誰もが分け隔てないのが俺達なんですよね。そういう意味でも怒りがないし、音楽的にも人間的にもバウンダリーなんて存在しないと思ってる」

--“We’re all the same”も、誰もが同じスタートラインから平等に生きてきたんだっていう歌ではないですよね。それぞれスタートラインは違って、だから歩む道も誇りも違う。それゆえに自分以外の人間と共に生きるのは面白いんだっていう気持ちがここに入っていて。そういう人間のストーリーに興味があって、人間が好きなのはどうしてだと思います?

Ryosei「うーん………わからないですね。カレーが好きとか、唐揚げが好きとか、そういう感じかも。理由なく、人間が好きですね」

--今日の話を踏まえると、人の背景を知ると、その人に対する愛情や思い入れが生まれてくるっていうのが大きいのかもしれないですよね。人の物語を知ることで、人を憎まずに生きていけるっていう。

Ryosei「それっす! 俺はバンドマンに対してめちゃくちゃお節介なんですよ。なぜかと言うと、客を適当にあしらっているバンドマンが大嫌いだったから、お客さんや周囲の人に対して近い距離でいたいと思っちゃうんですよね。もちろん人それぞれにやり方と考え方があるけど、俺は、目の前の人に真っ直ぐ向き合いたい。だから周囲の人にいろいろ言いたくなっちゃうんですよ。じゃあそれによって俺がどうしたいのかって言ったら、その人を知ることによって、その人をもっと好きになりたいからだと思うんです。なので、言ってもらった通りだと思います。怒りたくないし、憎みたくない。分け隔てなく、人を好きでいたい」

--冒頭の質問の答えを聞けた気がします。なんでもアリにしたいのは、憎まず愛して生きていくためだっていう。

Ryosei「そうなんでしょうね。……丸裸にされた気がします(笑)」

(勢いよく部屋の扉が開く)

KAITO(Dr)「すみません! 遅くなりました! えっと、音楽の入りはX JAPANからで——」

タカギ「ははははははは!」

--KAITOさん、すみません。インタヴューがまとまったところでした。

KAITO「えー! 寝坊しました……」

--なんとか間に合ってよかったです(笑)。KAITOさんにとって、JasonAndrewの音楽はどういうものですか。

KAITO「メロディックハードコアを主軸に、各々が好きなことをやって、『オルタナティヴ』と呼ばれる音楽を全部食っていくバンドというか。俺らを扉にして、聴いた人がいろんな音楽を好きになっていけたらいいなって思ってます。入り口みたいな音楽なんじゃないかなって」

--どうして扉になりたいですか。

KAITO「いろんな音楽を知ることって、いろんな人と出会うきっかけが増えることとイコールだと思うんですよ。流行っている音楽しか聴かない人でも聴けるバンドになれれば、ロックバンドにのめり込んで、ライヴハウスでいろんな人と出会える機会をどんどん作れるっていうことなんで。いろんな音楽を聞ければ、それだけ楽しくなれるから。未知を発見するような楽しさがたくさんあるっていうことに気づいてもらえたら、どんどん豊かな日々になると思うんですよね。なので、自分達の輪が広がればいいかなって思います」

--バッチリです。では、以上です!

KAITO「ええっ、これだけ!?」

Ryosei「はははははは!」

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